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桜鬼(さくらおに)*Black Cherry みなづき様に捧ぐ*

2011–04–08 (Fri) 14:19
このお話は、リンクを貼らせて頂いております、
『Black Cherry』管理人 みなづき様に捧ぐ第一弾です。

キリ番リクエストでお描きになっている“サクラとセバス”が、
桜に魅入られて連れ去られそうな表情に見えたので、
こんなお話を書かせて頂きました。

暖かい午後の日差しの中の坊ちゃんとセバスチャンのイメージです。
日本の木ですからね、あの人もご登場です^^

それでは、いってらっしゃいませ。



桜鬼(さくらおに) *Black Cherry みなづき様に捧ぐ*

旦那様、今年も桜が咲いております。
私が日本を離れる時に持って参りました桜は、大きく枝を広げ、
花の頃には、旦那様や奥様の目を楽しませたものでございます。
まだお小さかった坊ちゃんが、木の下に置いた揺り籠でお休みになられておりましたのは、
ついこの間の事のようでございますのに、
旦那様と奥様が亡くなられてから、もう3度目の春となりました。



長身で漆黒の髪の当主の執事が、美しく咲く桜の木の下に佇んでいる。
珍しく燕尾服を脱いで、シャツにウエストコート姿。
何か考え事をしているらしく、顎の下に指を当てて小首を傾げ、
淡いピンクに霞む梢を見上げていた。
「セバスチャン。」
柔らかな声で執事の名を呼んだのは、少年当主。
「坊ちゃん。」
振り向いた執事は、少し驚いたような顔をした。
「どうなさいました?」
「フィニが、桜が満開だと言っていたから、見に来てみたんだが、
お前は何をしているんだ?」
桜は、裏庭の奥まったところに植えられている。
わざわざでなければ来ない場所なのだ。
「タナカさんが、日本には、桜を使ったスイーツがあるとおっしゃっていましたので、
坊ちゃんのお口に合いそうな、桜を使ったスイーツが作れないかと思いまして、
桜の花を見ながら考えていたのですよ。」
執事は、当主の碧い瞳に自分の顔が映るのが分かる距離で見詰める。
当主は、執事の紅茶色の瞳を真っ直ぐに見つめ返している。
「そうか、楽しみにしている。」
フッと笑顔を浮かべた当主。
「ご期待に添えるものをご用意致しましょう。」
胸に手を当て腰を折る執事も、微笑んでいた。

当主と執事は、そよ風に揺れる桜の花を二人で見上げていた。
「タナカが、日本人は桜がとても好きなのだと言っていた。
華やかに咲き誇り、時が来れば、未練なく枝を離れて散っていく。
その潔さが、“サムライ”の精神に通じると思われているのだと。」
「“サムライ”、日本の騎士の事ですね。」
「ああ。彼らは、忠義と家名と誇りを、とても大事にするのだそうだ。」
クスリと、執事が笑った。
「まるで、坊ちゃんのようですね。」
フンと鼻を鳴らす当主は、面白くもないと言いたげだ。
「タナカにも言われた。」
また、暫く無言で桜を見上げる主従。
口を開いたのは、少年当主。
「“サムライ”は、信念の為には、その命を惜しげも無く投げ出す。
そんな姿が、桜を思わせるのだという話だったな。」
「なるほど、坊ちゃんは、まさしく“サムライ”と言えそうです。」
どこか、複雑な思いがありそうな笑顔を当主に向ける執事。

ざざっと、大きく枝を揺らす風が吹いた。
花びらが、音も無くはらりはらりと降ってくる。
執事が、白い絹の手袋に、淡い紅色を受け止める。
いつも圧倒的な存在感を示す漆黒の執事が、何故か、儚く見えた。
当主が、慌てたように手を伸ばし、
執事のシャツの袖を、細い指の先でキュッと摘まんだ。
どうしたのかと振り向く執事。
「坊ちゃん?」
答えに窮する当主は、執事を見上げたまま。
取られていない方の手で、執事は、当主の頬に体温を伝える。
それでも、当主は、シャツを摘まんでいる指から力を抜けない。
「タナカが、桜の老木は魂を持つのだと言っていた。
精とか、魔物とかいったようなもので、“鬼”とも言うらしい。」
当主は、そこで一旦言葉を切って、思い切ったように続けた。
「桜の下には、花に魅了された屍が埋まっていて、その養分を吸い上げるから、
こんなにも美しく咲き誇るのだと言われる事もあると。」
首を傾げて聞いている執事。
「お前が・・・。」
不安げに瞳を揺らし、当主は執事から視線を外した。
シャツを摘まみ続けている指先が白くなっている。
当主が言い淀んで言えなかった事が分かったのか、執事がクスッと笑った。
「私は坊ちゃんのお傍におりますよ。」
筋の通った当主の鼻に、白い絹に覆われた人差し指を置く。
当主は、漸くシャツを離し、執事の首に両腕を回して執事を引き寄せる。
身長の差が大きいので、当主はつま先立ちだ。
甘さが滲むのを抑えられない顔で、執事が当主を抱き上げた。
「今夜のデザートは、ムースブランに桜のソースを添えましょう。
彩に、赤いサクランボの砂糖漬けを少しと、ミントの葉で緑を。
器は、デザートグラスが映えるでしょうか。」
執事の話す内容など、当主は聞いてはいない。
当主が聞いているのは、執事の低めの甘い声なのだ。
「任せる。屋敷へ。」
短く命じれば、執事は全てを心得ている風に答える。
「イエス、マイ・ロード。」
当主をその腕に抱いていても、執事の優雅な足取りは変わらない。
軽やかにステップを踏むように、桜の木を後にした。



旦那様、坊ちゃんは、流石にお目が高くていらっしゃいますね。
あの日、坊ちゃんが連れて来られた執事は、只者ではございませんでした。
執事として大変有能でございますし、立ち居振る舞いには隙が無く、
広い知識と、深い見識を持ち、何事に於いても一等優れておりますし、
坊ちゃんの身をお護りする為の能力も、充分以上に確かです。
そして、旦那様と奥様の不在を埋めて余りある存在として、
坊ちゃんの信用をしっかりと得ているようでございます。
信用だけではないようですが、よろしゅうございましょう、旦那様。
私共のように、何れは老いて、お傍を辞さねばならなくなるようなものより、
坊ちゃんが最期の時をお迎えになられる瞬間まで、
ずっと変わらず、お傍にお仕え出来るものがいた方が、安心お出来になられましょう。
旦那様、桜に魅入られたのは、鬼の方でございますよ。



End



※※※  ※※※  ※※※

あとがき

執事タナカ、どこまで知っているのでしょう。
何者かも見えてこない彼ですが、
坊ちゃんの幸せを願っているのは確かだと思うのです。

              たままはなま
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プロフィール

たままはなま

Author:たままはなま
生息地域 日本で唯一、神無月の無い県
誕生日  5月24日(双子座)
血液型  AB型
行動の指針 後悔は少ない方がいい。やらずに後悔する位なら、今やって失敗した方がいい。「このままで、明日、命を落としても後悔しないか?」これが、最終判断の基準です。
黒執事キャラ占いで、47%がセバスチャン、タナカが33%、劉が10数%、葬儀屋が8%、アバーラインが数%、坊ちゃんが1%で出来ていると出た人。
歯医者の待ち時間や、通勤の運転中にも、次回の執筆のネタを考えている創作好き。
こんな管理人でございますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます<(_)>

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