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Life is Beautiful (Soundles Voice)

2011–03–28 (Mon) 08:12
このお話は、マダム・レッドの最後の意識を書いたものです。

一言も残せないまま逝ってしまったこの人には、
言って置きたい事があっただろうという気がしていて、
どうしても、書きたかったのです。

残したかっただろう言葉を、きちんと拾えたかどうか分かりませんが、
少しでも、彼女の心に寄り添い、思いを掬い上げたくて。

マダム・レッド、どうか安らかに。

それでは、いってらっしゃいませ。



Life is Beautiful (Soundless Voice)

闇夜を切り裂く稲光、轟く雷鳴、土砂降りの雨。
チェックメイトされたチェス盤。
私は、あの時、未来を悟ったのかも知れないわね。

「どこの誰ともしれないアンタに頼むのもおかしいけど、
どうかあの子の傍を離れないで頂戴。
道をはぐれて独りで迷ってしまうことがないように。」
彼は、優雅な仕草で胸に手を当て、膝を折って答えた。
私を安心させるような穏やかな笑顔で。
「ええ…必ず。最後までお傍でお護りいたします。」

貴方が一番辛い時、傍にいてあげられなかった事を悔いていても、
リストの最後の一行に、どうしてもチェックを入れたかったの。
ごめんね。
私は、貴方を苦しめる・・・。小さな、可愛いシエル。
私の大好きな姉さんと、私の大好きなあの人の子供。
本当に、愛しくて、可愛くて、大事で、そして堪らなく・・憎らしいのよ。
あの二人の子供だから憎く、あの二人の子供だから愛しい。
引き裂かれる心は、等分に真実で、揺れる事さえ出来やしないの。
道をはぐれて独りで迷ったのは、私。

終わらせるべき時に、きちんと終わらせておくべきだったのね。
あの時の、あの判断が、今この時の私のありようを決めた。
自業自得、身から出た錆、自分の蒔いた種。
でも、後悔をしているわけじゃないのよ。
私は、綺麗で優しくて、気さくで明るい姉さんが好きだったし、
気品があって、知的で穏やかで、美しいあの人が、大好きだった。
ただ、あの人の隣に立つのが姉さんだというのが、
はらわたが沸き立ち、吹き零れるほどに堪らなく厭だっただけ・・・。

一度、自分に嘘をついたばかりに、取り返しがつかなくなってしまったの。
何でもない振りなんかするんじゃなかった。
諦めた振りなんかするんじゃなかった。
聞き分けのいい、いい子の振りなんかするんじゃなかったわ。
縋ればよかったのにね。
みっともなく、浅ましく、醜く、精一杯にこの手を伸ばし、
枯れるくらいに大きな声を張り上げて、あの人を欲しがればよかった。
姉さんよりも、私を選んでと言えばよかった。
そうして、持てる限りの力を尽くしても駄目だったのなら、
きっとこんな風にはならずに済んだ筈だったのに違いないと思う。
きちんと始めて、きちんと終わらなければ、本当には前に進めないと、
今になってやっと気が付くなんて、ホント、悪い冗談だわ。

死の間際には、走馬灯のように一生を見る。
死神の鎌が魂と体を切り離し、命数が尽きるまでの僅かな間に。
只々、何もかもがピカピカして楽しくてならない日々があって、
いつも傍にいる、理想の自分である姉さんに引け目を感じる日々があって、
初めての恋に心を開いた日々があって、
大事さと疎ましさが互角に戦う疾風怒濤の日々があって、
知った上で、私を大事にしてくれる人との静かな日々があって、
それを失い、大好きなあの人と、あの人に愛された姉を同時に失った。
共に逝けた姉を・・どれだけ妬ましく思った事か!
行方不明の後に帰ってきたシエルは、天真爛漫で幼い子供ではなくなっていた。
内に闇を息づかせ、昏い深淵を見据える眼をした、あの人のミニチュア。
なのに、姉さんによく似た顔をしているのよ。
嵐に翻弄され、私は、憎み愛したシエルを手に掛けようとして、果たせなかった。
だって、私の大好きな姉さんにそっくりなんだもの。
あの人がたった一つ、この世に残したものなんだもの。
私の大事な人たちが、シエルの中に生きているのよ。
殺せない、私には。

私は、地獄に落ちるわね。
でも、それでもいい。
地獄には、あの人がいるから。
姉さんは天国に行くべき人だから、きっと地獄にはいないわ。
やっと、私はあの人の傍に行けるの。
地獄で、はじめてあの人を独り占めに出来るの。
だから、私は、不幸じゃないのよ
だけど、ね・・・・・。

シエル、私のようにはならないで。
貴方は、地獄に落ちて来ることも出来ない。
天国に行く事なんかは、とっくの昔に放棄しているし。
独りで、昏い闇を彷徨う貴方を思うのは辛すぎるわ。
私の愛したあの人の子供。
大好きだった姉さんに生き写しの子供。
私が愛と憎しみを注いだ可愛い甥っ子。
だから、私は、彼に貴方を託したの。
彼は、貴方を決して独りになんかしないわ。
何があっても、貴方の傍を離れる事はありえない。
あの人を思い続けた私だから分かるの。
彼が貴方に注ぐ視線の意味が、貴方が返す視線の意味が。
マダム・レッドを舐めないでよね。
彼と貴方の関係なんて、とっくに察しは付いているわ。

貴方の守護悪魔(ガーディアンエンジェル)は、貴方を必ず導いてくれる。
独りきりではない世界へと。
シエル、お願いだから、どうか、ほんの少しでもいい、幸せになって頂戴。
セバスチャン、シエルを、あの人の子供を護って。
私は、地獄で、あの人と一緒に、シエルの幸せを祈っている。
セバスチャン、どうぞ、シエルを・・・。



End



※※※  ※※※  ※※※

あとがき

激しく生きたこの人が好きです。
方向性が間違ってしまいましたが、一生懸命生きた人だと思います。

ヴィンセントと生きるには、この人は激し過ぎる。
ヴィンセントもまた、非常に激しい人だから。
闇を総べるヴィンセントが、内面まで穏やかな筈がない。
シエルがそうであるように。
だからこそ、レイチェルを選んだのだろうと、
マダム・レッドも気がついてはいたのかもしれないですね。

分かっていても、止める事が出来ない。
激しい恋情。
ある意味、羨ましい生き方ですが、痛々しいです。
                     たままはなま
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たままはなま

Author:たままはなま
生息地域 日本で唯一、神無月の無い県
誕生日  5月24日(双子座)
血液型  AB型
行動の指針 後悔は少ない方がいい。やらずに後悔する位なら、今やって失敗した方がいい。「このままで、明日、命を落としても後悔しないか?」これが、最終判断の基準です。
黒執事キャラ占いで、47%がセバスチャン、タナカが33%、劉が10数%、葬儀屋が8%、アバーラインが数%、坊ちゃんが1%で出来ていると出た人。
歯医者の待ち時間や、通勤の運転中にも、次回の執筆のネタを考えている創作好き。
こんな管理人でございますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます<(_)>

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