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そんな事もあるかもしれない(Ep1)おまけ

2011–03–20 (Sun) 20:12
このお話は、「そんな事もあるかもしれない(えぴそーど1)」の続きとなっております。

「なんだかんだ言いながら、妊娠中にだんだんとママになっていく気がします。」
とコメントを下さった方がございまして、そう言われてみると、
もう、気になりだしたら気になって、書かずにはいられませんでした。

コメントを下さいましたお嬢様、ありがとうございました!
お陰様で、こうしてまた一つ、お話が出来上がりました。
また何かございましたら、ぜひ、お声をお聞かせ下さいませ。<(_)>

それでは、いってらっしゃいませ。




そんな事もあるかもしれない(Ep1)おまけ

僕は、あの日、迂闊にも奴の前で退屈そうな顔などしてしまった事を、
今更ながらに悔いている。
お蔭で、とんでもない事になってしまっているのだった。
幸いに、ここには強面のフランシス叔母様も、婚約者のエリザベスも、
何にでも矢鱈に首を突っ込んでくる劉もいなければ、
先代から仕えているタナカも、騒がしい使用人たちもいない。
僕のこんな姿を、誰にも見られる事は無い。
もしも、万が一にも、こんな姿を誰かに見られでもしようものなら、
確実に、僕は恥ずかしさで死ねると思う。
こんな、有りえない姿・・・。

「坊ちゃん、具合はいかがですか?」
僕がこんな姿になった理由を作った男、悪魔で執事なセバスチャンが、
優雅な歩みで銀のワゴンを押しながら部屋に入ってきた。
ベッドで横になっている僕に、紅茶とスイーツを運んで来たのだ。
「レモンの香りがする・・。」
気分が優れず、ぼんやりとしている頭が、レモンの香りで少しすっきりするように思えた。
「今日は、殊の外お辛そうですので、
何かさっぱりとしたものでも召し上がられてはどうかと思いまして、
レモンメレンゲパイと、香りの高い夏摘みのダージリンをお持ちしてみましたが、
如何なさいますか?」
僕の前髪を柔らかに梳く長い指の優しさに、ちょっとムカつく。
「お前の所為だからな。」
体の辛さでイライラしながら、奴を睨んでみる。
「まあ、そうですね。」
余裕の笑みで、僕の傍に膝を付いて頬にキスを寄越す。
こいつときたら、なんて甘い顔をして僕を見詰めるんだろう。
まるで、チョコレートにストロベリージャムでも掛けたみたいじゃないか。
「人が苦しんでいるというのに、何だその締りの無い顔は。」
もう、腹が立つよりも呆れてしまう。
「仕方がないでしょう。
大事な私の坊ちゃんが、私の子供をその身に宿している事実が嬉しくて、
本当にどうしようもないのですから。」
そう、僕は妊娠しているのだった。
退屈で堪らないくらいなら、そろそろ子供を持とうとか、
セバスチャンが訳の分からないことを言ってきて、僕は断ったのだが、
結局、何というか、そんなこんなで押し切られてしまって、
奴の思い通りにされて・・、いや、思惑通りにされて・・・、その・・、
つまり、こんな事態になってしまったという事だ。

はっきり言って、僕は何もかもに混乱、困惑するばかりで、
どうしていいのかさっぱり分からないし、
けれど、確実に体の中に生きものがいるのは実感されるので、
ますます思考は乱される。
お腹が膨らみ始めてから、ぐるんぐるんと何者かが動くのが分かるようになったのだ。
自分の腹の皮の中、内臓の上を勢いよく行ったり来たりする感覚。
水槽を飛び出しそうな勢いで泳ぎ回る金魚を腹の内に飼っているようだ。
あまりに動き過ぎる日は、今日のように気分が悪くなる。
悪魔になった僕に、人間の頃のような食事は必要ないのだが、
気分の悪さを少しでも紛らわせようとして、セバスチャンがスイーツを用意する。
桃のゼリーだったり、リンゴのコンポートだったり、葡萄のジェラートだったり。
綺麗に飾り付けられたスイーツは、見ているだけでも気分が晴れる。
僕を悪魔に転生させた女悪魔が僅かばかりの慈悲でも掛けたものか、
幸いにも、味覚は人間の時のままで、口の中がさっぱりするのは嬉しく、有り難い。
僕が何より好きなセバスチャンのスイーツを、美味しいと感じながら食べられるのには、
本当に感謝している。

「体を起こせますか?」
低めの声が、気遣わしげに問う。
「クッションを多めに持ってきてくれ。」
体を起こすのは正直苦しいのだが、パイが食べたかった。
「御意。」
甘やかな笑顔と声で返事をすると、ソファーからクッションを運んで来て、
ベッドのヘッドボードに立て掛け、僕の体を凭れさせる。
「はぁっ。」
体を起こしただけで、辛くてため息が出てしまう。
こんな様子を、以前はくすくす笑って見ていた筈のセバスチャンが、
今は、労わるように僕の頬を両手で包み込む。
「坊ちゃん、申し訳ございません。もう暫くだけご辛抱ください。」
そう言って、僕の額に、こつりと自分の額を合わせてきた。
紅茶色の瞳を飾る黒々と長い睫が、何だかちょっと揺れて見えて、
そうしたら、怒るなんて出来ないじゃないかと思う。
卑怯な奴だ。
「生まれるまでの間だけだろう?」
そう言って微笑ってやる。
「坊ちゃん・・・。」
そんな申し訳なさそうな顔をするな。お前らしくもない。
「いいから、早くパイを寄越せ。」
雛鳥を真似て、口を開けて待つと、奴はくすりと笑ってパイを僕の口に運ぶ。
レモンメレンゲの仄かな酸味に、ほっとする。
「いかがですか、坊ちゃん。」
「悪くない。」
褒めた訳でもないのに、奴は頬を緩める。
腹の中の金魚がぐるんと動いた。
セバスチャンの手を取って、動きを感じる辺りに置く。
「いま、この辺りで動いた。」
少しして、またぐるりと動く。
「分かったか?動いたの。」
セバスチャンの目が、驚きで見開かれている。
「ええ、確かに。ここに、いるのですね。」
不思議な感覚。
見たこともない生きものが、自分の中で生きて動いていて、
皮の上から触れても、それが知れる。
「不思議だな、セバスチャン。」
「そうですね。神秘的、というのでしょうか。」
僕も、母の胎内でこんな風に泳いでいたのだろうか。
父も、母のお腹に手を当てて、僕を感じた日があったのかもしれない。
本当に、不思議な事だ。

パイと紅茶を平らげると、少しだけ気分が良くなった。
「坊ちゃん、少しお休みになられた方がよろしいでしょう。
お顔色があまりよくないようですから。」
そう言って、セバスチャンは僕を横にならせると、
僕の腹に顔を寄せて言った。
「いい子ですから、あまり暴れないで下さいね。
あなたが暴れると、お母様が苦しくなってしまいます。」
「ちょっと待て!今、何て言った?!」
僕は半身を起して叫んだ。
「なんです?そんな大きな声を出して。」
大きな声も出すというものだろう、さっき、こいつは・・。
「“お母様”ってなんだ?!」
「何って、坊ちゃんの事に決まっているでしょう。」
さも当然といった顔で、セバスチャンは平然と答える。
「僕は“お母様”じゃない!」
男の親は“お父様”じゃないか、どうして僕が“お母様”なんだと憤慨する。
「坊ちゃん、産まない方の親を父親、産む方の親を母親というのは、
生物全体の共通認識だと思いますよ。
坊ちゃんは産む方の親ですから、“お母様”です。」
セバスチャンが、いつもの通りの曇りの無い笑顔でそう言った。
僕は、頭が真っ白になって、さらさらと崩れていくような気がして、
暫く、呆けたように動けなくなってしまったのだった。



End



※※※  ※※※  ※※※

あとがき

あの、・・続き、気になるのですが、書いてもよろしいでしょうか?
読んで下さる奇特なお方がいらっしゃいましたら、挙手!

追記

このところ、立て続けに素敵サイト様をリンクにお迎えさせて頂いております。
後日、当初からリンクをお許し下さっておりますサイト様とご一緒に、
改めてご紹介の場を設けさせて頂く予定にしております。
少々お時間を下さいませ。
                 たままはなま

拍手にコメントを下さいました方、お返事を書かせて頂いております。
お心辺りがおありの方は、お読み下さいますようお願い申し上げます^^
M様、Sn様、St様、R様、Ta様、Po様

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たままはなま

Author:たままはなま
生息地域 日本で唯一、神無月の無い県
誕生日  5月24日(双子座)
血液型  AB型
行動の指針 後悔は少ない方がいい。やらずに後悔する位なら、今やって失敗した方がいい。「このままで、明日、命を落としても後悔しないか?」これが、最終判断の基準です。
黒執事キャラ占いで、47%がセバスチャン、タナカが33%、劉が10数%、葬儀屋が8%、アバーラインが数%、坊ちゃんが1%で出来ていると出た人。
歯医者の待ち時間や、通勤の運転中にも、次回の執筆のネタを考えている創作好き。
こんな管理人でございますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます<(_)>

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