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The Bird Is Mine (駒鳥 夜会編)

2011–03–12 (Sat) 11:01
このお話は、駒鳥シエルとセバスチャンの夜会でのお話でございます。
書いているうちに、このお話には続きが必要な事に気が付きまして、
そちらは、別作品として書くことにいたしました。

夜会編は、原作様のセリフをそのまま使い、
原作様のイメージを極力壊さない様にいたしております。
「控えめな二次創作」とでもいった感じでしょうか。

それでは、いってらっしゃいませ。




The Bird Is Mine (駒鳥 夜会編)

私の名前を呼んで。
一夜限りのシンデレラ。



女王陛下の憂いを晴らすため、事件の捜査で潜り込んだ夜会。
身元を隠し、主催者に近付き易くするのに都合がいいように、
坊ちゃんに女装をさせる事になった。
坊ちゃんはマダム・レッドの姪、私はその家庭教師の役どころでの変装だ。
嫌がる坊ちゃんを宥めすかし、説き伏せて、
淑女としての立ち居振る舞いをみっちりと教えた上で、
愛らしくも危うい色香を漂わせるように身支度を整えた。
もともとが小柄であるし、少女と見紛う容姿のため、
よほど親しくしている者でなければ見破れそうにない変装が出来た。
マダム・レッドによると、今夜のターゲットであるドルイット子爵は、
とにかく守備範囲が非常に広いのだそうで、
やはり女装の方が好都合であろうとの話になった。
「伯爵に手を出すのは犯罪じゃないかなぁ。」
劉様は、そう言っていつもの軽さで笑っている。

それでは、私は大変な犯罪者ということになると、クスリと笑った。
毎晩のように、掌を、あの吸い付くような白い肌に這わせ、
この指で、内側から、蕩けるほどに体温を上げさせて、
あの人の中に侵入し、色の濃い声で囀らせているのだ。
二人共が満足するまで、悦楽の海にたゆたい、溺れる。
そして、真っ白な世界へと連れ立って行く。
あの人は、私のもの。
本来なら、肩も露なドレスを着せて人目に晒すなど持っての外だが、
まあ、今回は、いたしかたないと大目に見ておく。
それにしても、コルセットで整えたくびれに、まったく違和感がない。
これでは、ターゲット以外にも注意をしておかなくてはならない。
自覚がないものだから、困ってしまう。
本当に、私の坊ちゃんときたら・・・。

挨拶をする振りをして子爵に近付くつもりが、
坊ちゃんの婚約者であるエリザベス様と言う難敵の登場で、予定が狂った。
エリザベス様から身を隠すべく、バルコニーに逃れたところで、
広間がダンスフロアに変わってしまったのだった。
こうなれば仕方がない、エリザベス様に追われずに子爵に辿り着くには、
ダンスに紛れて、フロアを突っ切る以外にはない。
「教えた通り出来ますね。」
そう言って坊ちゃんを促し、手を引こうとする。
「公の場で僕に踊れというのか!?執事(おまえ)と!?」
坊ちゃんが、身体を反らせて抵抗した。
私は、坊ちゃんの方に向き直り、距離を詰める。
「お忘れですか?私は、今は、あくまで家庭教師ですから、
今宵だけは、公の場でお嬢様とダンスを許される身分なのです。
執事(使用人)としてではなく、上流階級出身の、教師としてね。」
変装の設定を失念してしまっていたらしい坊ちゃん。
「そ・・・、そうだった・・・。」

「他のペアにぶつからないようリードします。参りましょう。」
曲目は、ワルツ。
坊ちゃんの手を取り、背をしっかりとホールドする。
身長差のため、私の肩に手を置くことの出来ない坊ちゃんの左手は、
私の右腕、肘の少し上辺りに添えられている。
この人は、本当に小柄な人なのだ。
坊ちゃんに言わせれば、私の背が高過ぎるらしいのだが。
身体が密着すると、
変装の仕上げにマダム・レッドが付けた鈴蘭のコロンが、
坊ちゃんの脈に合わせて、首筋からふわりと漂う。
可憐な花だが、全草、特にその花と根には強い毒を多く持つ危険な花。
花言葉に“意識しない美しさ”というのもあって、坊ちゃんにはうってつけだ。
マダム・レッドの絶妙なチョイスに唸る。
「曲をよく聴いて。
曲に合わせてステップを踏んでくれれば私がカバーします。」
ダンスフロアへと踏み出してゆく。
「もう二度としないからな!女の踊りなど!」
坊ちゃんは、羞恥で顔を真っ赤にしている。
伏目がちになる潤んだような目元が、心をくすぐる。
「ええ、こんな事は今夜限りですよ。」
私は、そんな坊ちゃんを見て、クスリと笑う。
本当は、このまま連れて帰りたいくらいだが。

右へ一歩、左へ一歩、ナチュラルターン。
坊ちゃんが必死にステップを踏んでいる。
あれ程、にこやかにと言い聞かせたのに、引きつりぎみの顔。
公衆の面前で坊ちゃんと踊る事が出来るのは、多分、今夜限り。
最初で最後のダンスだというのに、
私のパートナーは、そんな事には気付いてもいないのだろう。
ミッドナイトブルーの髪を揺らし、ドレスの裾をひるがえしながら、
ステップを口の中でぶつぶつと唱えている。
そんな姿も、愉しくはあるのだけれど・・・。
一夜限りのシンデレラは、まだまだ、こういう感覚に疎いのだと苦笑を零す。

いよいよ、エリザベス様の目の前を横切らなければならない。
「そのまま前へ。突っ切りますよ。」
ターンのタイミングで、私の背中に坊ちゃんの顔を隠して、
なんとかエリザベス様の視線をかわした。
後少しで、辿り着く。

タンッ。
楽しげにダンスに興じる人々の波から抜け出し、坊ちゃんはやっと対岸に着いた。
日ごろの運動不足がたたるのか、もうすぐ13歳とは思えない体力の無さで、
床に膝を着き、息も絶え絶えの有様の坊ちゃんは、
「やっと着いた・・・!!!」
の一言でさえも、声にはなっていない。
「だらしないですね、これしきの事で。」
もう少し体力を付けさせなければいけないと呆れてしまった。
ヨロヨロと立ち上がる坊ちゃんに手を貸す。
「今、水を ・・。」
言い掛けたところで、すぐ傍からパチパチと拍手が聞こえた。
「素晴らしい。
駒鳥のように可愛らしいダンスでしたよ、お嬢さん。」
ドルイット子爵が向こうから声を掛けて来た。
「お嬢様、私は何かお飲み物を。」
私は、その場をスッと離れる。
坊ちゃんの瞳に、小さな不安が一瞬宿った。
私が目で頷くと、坊ちゃんはドルイット子爵に相対した。

坊ちゃんは、手の甲に子爵からの挨拶のキスを受けて鳥肌立っている。
質問に答えながら、ドレスで手を拭いているのが見えた。
気持ちは分かるけれど、それはどうかと溜息が出た。
コケティッシュな笑みで坊ちゃんが誘うと、彼はあっさりと乗ってきた。
まだあどけなさを残す少女に食指を動かすとは、本当に守備範囲が広い。
坊ちゃんに溺れている私が言う事ではないかも知れないが。

腰をなぞられ、背中から近寄られて、
小刻みに震えながら鳥肌をたてる坊ちゃん。
顎を掬い、顔を近づける子爵に冷や汗をかきながら話を進めていく。
内心、全てが終われば始末してやるくらいに思っているだろう事は、
こめかみに浮かぶ筋を見れば、想像に難くない。
私のものにやたらに触れればどうなるか、後で思い知ってもらうけれど、
坊ちゃんの様子は面白くて、見ていて飽きない。
が、またしてもエリザベス様に目を付けられている。
ダンスが終われば、すぐさま坊ちゃん目指して真っ直ぐに駆けていってしまうだろう。
折角ここまで来たのに、ふいにされてはかなわない。
手軽に出来る足止めをするとしよう。

広間を駆けて来るエリザベス様の前に、大音響でクローゼットと共に登場する。
突然の事にざわつく会場。
「宴も酣(たけなわ)、お集まりの紳士淑女の皆様に、
ここで一つ、このクローゼットを使った魔術(マジック)をご覧にいれましょう。」
高らかに言えば、耳目は私に集中する。
「そこの貴方、ご協力願えますか?」
劉様にも仕事をして頂かなくてはならない。
「我(わたし)かい?いいとも。」
劉様がニコリと笑った。
案の定、エリザベス様の目は、もう釘付けだ。
「この何の変哲もないクローゼット、今から私がこれに入ります。」
子爵が不思議そうな顔をする。
「手品なんか頼んだ覚えはないんだが・・・?」
坊ちゃんまで気を取られ、呆然としている。
だが、すぐにはっとしたようだ。
今のうちにと気が付いて、さらに子爵を誘う。
「子爵、私、手品も見飽きてますの。
だから・・・ね?」
追いすがる子猫のような潤んだ目をして見上げている。
そんな表情も出来るとは知らなかった。
思っていたより、坊ちゃんには意外と引き出しが多いのかも知れない。
今度、私の為だけに、新しい表情をリクエストしてみようか。
「仕方のない子だ!わかったよ、私の駒鳥。」
貴方の駒鳥ではないのだけれどと内心思って見ていれば、
坊ちゃんは、自分のした事に寒気を催し、鳥肌を立てている。
面白過ぎて、噴出しそうになった。
子爵が、厚いカーテンの後ろに隠された扉を開け、坊ちゃんを誘う。
「奥へどうぞ。」
心を決めるように、ぎゅっと拳を握り、坊ちゃんは扉の向こうへ消えた。

こちらは、劉様と茶番を演じなければならない。
「貴方は私がクローゼットに入ったら、しっかりと鎖で封をして下さい。
そしてこの剣で、クローゼットを串刺しにして下さい。」
会場はざわめき、エリザベス様は手に汗を握って、事の行方を見守っている。
「私は串刺しになったクローゼットから、見事生還して見せましょう。
タネもしかけもございません。稀代の魔術をご覧あれ。」
劉様は、私が入ったクローゼットに鎖で封をすると、
いきなり脳天から一撃を加えて来た。
これは、さすがにちょっと痛かった。
後は、まさに遠慮会釈無く、針山に針を刺すごとくに剣を突き立てる。
その気合の入りようは、どうも、何か悪意というか、
日ごろの恨みとでもいうか、只ならぬものを感じさせた。
そういえば、この人も私のいない隙を狙って、
坊ちゃんに善からぬ企みを持っている気配があったと思い出す。
まったく、私でなければ死んでいた。

クローゼットの魔術(マジック)から見事に生還を果たし、
盛大な拍手を受けて引き上げた後で、劉様はいつもの得体の知れない笑顔で言った。
「ちょっと殺っちゃったかもって思ってた!」
いっそ死ねばよかったのにと言ったように聞こえたのは、空耳だったろうか。
まあ、この程度では傷も残らないのだが。

坊ちゃんの気配は、屋敷の奥まった所に行った。
そして、揺らいで、薄くなった。
この感じ、多分、薬か何かで気を失ったのだろう。
また、捕らわれたのだ。
まったく、世話の焼ける人。
さあ、早く目を覚まして、私の名前を呼んで。
私の坊ちゃん。
私は、いつでも迎えに行く用意が出来ているのだから。



暫く薄かった気配が、ふっと強くなる。
坊ちゃんが目を覚ましたのだ。
気持ちが逸る。あの声が、私の名前を呼ぶのが待ち遠しい。
坊ちゃん、呼んで。貴方が私に付けた名前を、早く。

「セバスチャン、僕はここだ。」
ああ、待ちかねたこの声。
一瞬の後には、坊ちゃんが捕らえられていた部屋で、
闇オークションの主催と顧客たちが皆、気を失って倒れていた。
「やれやれ、本当に捕まるしか能がありませんね、貴方は。」
呆れ気味にそう言いながら、ステージを見遣る。
私の美しい主人は、籠の鳥になっていた。
艶やかなミッドナイトブルーの髪をツインテールに結い、
モスリンをふんだんに使って、黒のリボンをあしらったピンクと白の繊細なドレスが、
美しい空を映した海と深き森のコントラストの瞳によく映える。
ロープで拘束されていても、不敵な眼差しが曇ることなど無い。
呼べば、よく躾けられた犬が迎えに来るのを疑わないから。

捕まるのが得意な主人を、
呼べば私が来ると思って不用心過ぎると嗜めれば、
主人は、フンと鼻を鳴らしそうな顔をして言った。
「僕が契約書を持つ限り、僕が喚ばずとも、
お前は、どこにでも追って来るだろう?」
透き通るオッドアイが、真っ直ぐに見上げてくる。
契約書を刻んだアメジスト色の右の瞳に、心が震える。
目に付く場所にあればある程、強い執行力を持ち、
そのかわり、絶対に悪魔から逃れられなくなる。
そして、悪魔も逃れられなくなった。
もちろん、何処へも逃がしはしない。
私だけの坊ちゃん。

鳥籠の鉄枠をぐにゃりと曲げて、私の愛しい小鳥を解放する。
「どこへでもお供します。最期まで。」
胸に手を当て、誓う。
「たとえこの身が滅びようとも、私は絶対に貴方のお傍を離れません。
地獄の果てまでお供しましょう。」
指を軽く一振りして、坊ちゃんのロープを断ち、自由にする。
「私は嘘は言いませんよ、人間の様にね。」
坊ちゃんは、するどい目をして私を見据えた。
「・・・それでいい。お前だけは、僕に嘘をつくな。
絶対に!」
それは、もはや執拗なまでに繰り返された命令。
私は、嘘は吐かないのだが・・。
「御意、ご主人様。」

ステージの上、私の足元で気を失っているのは、ドルイット子爵。
私のものを無闇に触った右手は、少々変わった角度に曲がっているけれど、
単純骨折程度の怪我なら、私の“おいた”が問題になる事もあるまい。
「さて、すでに警察(ヤード)には連絡しておきました。じき到着するでしょう。」
坊ちゃんは、ゲームをクリアし興味を手放した時の顔で、短く息を吐いた。
「なら長居は無用だな。
僕らが居ては、猟犬共(ヤードども)もいい顔をしないだろう。」
それは、“坊ちゃん”のいつもの台詞。
私は、失笑する。
「そのお姿ではなおさら・・・ですしね。“お嬢様”」
絶句する坊ちゃん。
咳払いをしてみても、染まった頬は隠せない。
「とにかく!切り裂きジャック事件はこれで解決だ!
随分とあっけなかったがな・・・。」
にっこりと私は微笑む。
嘘を吐いていないからといって、全てを報告しているとも限らない。
さて、このゲームに坊ちゃんはどのタイミングで気が付くだろう・・・。

愛しているからといって、何もかもを許容する事は出来ない。
ゲームに貪欲なのは、何も坊ちゃんに限ったことでは無いのだ。
貪欲にゲームを愉しむのは、悪魔も人後に落ちない。

扉の向こうから、大勢の人の気配と話し声がしてきた。
「どうやら警察(ヤード)が到着した様ですね。」
坊ちゃんは、逃げ道を塞がれたと慌てている。
私に取って、ドアを開けるばかりが逃れる方法では無いのに。
坊ちゃんを掬い上げ、その軽さを左腕一本で抱えると、
驚いた顔をした坊ちゃんが、私の肩に両手で摑まる。
「では参りましょう。」
私は、坊ちゃんをしっかりと抱えて、床を蹴った。
夜会が催されている広間を見下ろす屋根の上に着地する。
ドレスの裾と坊ちゃんのツインテールが、ふわりと闇に舞い上がり、
重力に従うのを見届けるよりも早く、次のジャンプをした。
私たちの姿を見たものは、誰もいまい。



end



※※※  ※※※  ※※※

あとがき

駒鳥シエルを見守るセバスチャン視点で書いてみました。
いかがでしたでしょうか?

こちらは、実は前振でございます。
私としての本編は、この下にUPしている
「シンデレラの不快」の方です。
どうぞ、そちらを合わせてお読み下さいますようお願い申し上げます。
                      たままはなま
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たままはなま

Author:たままはなま
生息地域 日本で唯一、神無月の無い県
誕生日  5月24日(双子座)
血液型  AB型
行動の指針 後悔は少ない方がいい。やらずに後悔する位なら、今やって失敗した方がいい。「このままで、明日、命を落としても後悔しないか?」これが、最終判断の基準です。
黒執事キャラ占いで、47%がセバスチャン、タナカが33%、劉が10数%、葬儀屋が8%、アバーラインが数%、坊ちゃんが1%で出来ていると出た人。
歯医者の待ち時間や、通勤の運転中にも、次回の執筆のネタを考えている創作好き。
こんな管理人でございますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます<(_)>

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