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Under The Rose (with Black Cat)

2011–03–05 (Sat) 06:54
このお話は、相互リンク記念として、
玲瓏-Nobility- 紅月様に捧げる2作目でございます。

「Blue Rose」のセバスチャンsideとなっております。
それぞれの想いがあっての関係ですので、
やはり、両方の視点からのお話が対になってこそかと思います。

それでは、いってらっしゃいませ。



Under The Rose (with Black Cat)

いつものように薔薇の手入れをしていた。
視界の端に映る坊ちゃんの部屋の窓に人の気配。
逆光で部屋は暗いが、悪魔の目には、はっきりと見える。
ミッドナイトブルーの髪の一筋、長い睫の一本まで。
何を思いながらか、じっと私の作業の様子を見ている。
何だか、思索に耽る顔で外の世界を見つめる猫のようで、
抱きしめたくなる。

手を振るわけにもいかないので、気が付いていると知らせるために、
誰かに見られても不自然でない角度で見上げ、微笑んだ。
坊ちゃんは、ほんの一瞬、目を見開いて、
眉尻を下げ、困ったような顔で微笑み返した。
口の動きだけで、「後で」と伝える。
坊ちゃんは、ふいと踵を返して、窓辺から遠ざかってしまった。
そんな、あっさりとしてつれない所も、私には愉しい。

一番美しく咲いている薔薇の一枝を、
坊ちゃんの午後のお茶に供する為に切る。
白薔薇の甘くも涼やかな香りは、坊ちゃんの肌の匂いを思い起こさせる。
あの柔肌に、何度も想いを滲み込ませているのに、
どうしても、染まりきってはくれないのだ、あの人は。



小さな肩に、ずっしりと圧し掛かる重圧。
広大な領地を持つ、歴史の古い由緒ある家柄の伯爵家の当主という荷。
英国で最も注目されている、新進気鋭のファントム社の初代社長としての荷。
裏社会の秩序を守る、女王陛下の番犬としての荷。
そして、悪魔である私の契約者だという事も、負荷で無いとは言えまい。
あの人は迷い無く、その全てをただ一人で負い、前に進み続けると決めているのだ。
骨を軋ませる重さを、強靭な精神で支えている。
そんな人だからこそ、私は、あの人に仕えると誓った。

いつも、後ろでその背中を見てきた。
凛とした背中の誇り高さ、気骨の強さ、度量の広さ。
肩が、どんなに華奢で細いのかも。

見つめ続けるうちに、私の中に生まれていくものがあると、知らなかった。
こんなに長く継続される契約は初めてで、
こんなに私の予想を超える事をしでかす契約者も始めてで。
私は、本当に何も知らなかったのだった。

ある日、突然に気付かされた。
私の中に蓄積され、形を成してしまったものがある事に。
頼りなげに思えていたそれが、以外にも強烈であると分かった。
捕らえているつもりでいた私は、
逃げる事も叶わない強さでもって、あの人に、囚われていた。
もがく事も出来はしない。
本能が、欲しがる。
抗えない。
飢餓感以上の渇きだ。
それなのに、今までのように思うが侭にする事はどうしても躊躇われてしまう。
「欲しさ」の由来するところが、全く別物なのだ。

欲しいだけでは済まない。
私は、初めて、“欲しがられたい”と思った。
必要だからでは無く、私の存在それ自体を求められたいのだ。
どれほどの長さを生きてきたのか忘れてしまうくらいの、長い長い悪魔の生の中で、
こんな事は、こんな想いは、初めてだった。

眠りを必要としない私は、図書室の書物を探した。
それでは求める資料が足りなくて、書庫の全ての蔵書を探した。
辞典・辞書、心理学の本、哲学の本、古典小説、近代小説、現代小説、詩や戯曲まで。
沢山の書物を読んで、もはや抵抗出来ないと納得した。
どんなに否定したところで、この想いの名は、一つしか無かった。
私には、ある筈の無かったもの。
あの人故に、私の中に生まれたもの。

同じ想いを、あの人が私に向けていてくれると分かった時の歓喜。
けれど、驚かせないように、怯えさせないように、
ゆっくりと慎重に距離を計って、近付いて、その手を取った。
焦らず、時間を掛けて、一段づつ階段を上る。
見つめる。指を絡める。頬に触れる。
肩を引き寄せる。抱き締める。キスをする。
それから・・・・・。

ただ享楽を貪った頃が、信じられない。
同じ想いを持つ者同士、互いの体温を求め合い、確かめ合い、分け合う悦楽。
ただの享楽とは比べるべくもない、溢れるような充足感。
満ち足りるとは、こういうものだったのだと知る。
だから、あの人にとって手荒になるような事は、したくない。
大事で、大切で。

私の想いで染め上げたい。
何度でも、その耳元に囁いて、
何度も、その肌に覚えさせるけれど、
あの人は、染まりきってはくれない。

私が、悪魔だから?
悪魔の愛は、信じられない?
悪魔に愛があるのが、信じられない?
無様なほどに貴方を想い、浅ましく醜悪なくらいに執着しているのに。
近付き過ぎると貴方まで焼いてしまいそうに、
私の内側から渦巻く炎が吹き上がっているというのに。
激し過ぎて、自制するのは正直、少々骨が折れる。
だが、唯一無二の大切な貴方を守る為の努力を惜しみはしない。

「マイ・ロード」
それは、貴方の為だけに言う言葉。
私が、貴方以外には言わない言葉。
だから、貴方以外には解けない暗号に成り得るのだ。
薔薇の下で告げた、貴方への想い。
私が、その言葉を言う度、思い出してと約束をした。
「この事は、どうぞ内密に。」
Under the rose.

あの日の、あの人の表情(かお)は、
私のこの命尽きても、絶対に忘れはしない。
多分、未だかつて、私以外には親にも見せたことの無いその表情は、
もちろん誰にも、秘密だ。
それは、私だけのもの。
薔薇の下で・・・。



ひとしきり薔薇の手入れが済んだ事だし、
そろそろ厨房に行かなくてはならない時間だ。
今日は、甘味の強い品種の大粒の苺が手に入ったので、
他のベリー類と合わせて、ミックスベリーのタルトにしよう。
カスタードクリームには、領内の地鶏の卵をたっぷりと使って。
タルト生地の甘味は、少し抑え目の方がいいだろう。
薔薇の香りが強いので、バニラエッセンスは控えめにしなくては。
ティーセットは、ベリーの色に馴染むワインレッドか、
ベリーが映えるコバルトブルーがいいだろう。
そうして心を砕いて何がしたいのかと言えば、
坊ちゃんに、「悪くない」の一言を言わせたいのだ。
その一言の前に見せる、一瞬の満足そうな顔に会いたくて。
私は、待っていられるほど気が長くない。
だから、貪欲に奪いに行く。
そんな小さな表情ひとつも、あの人のものを取り零しはしない。

骨抜きにされたと言う同属もいるかもしれないが、
そうではない。
より悪魔らしくなったのだ。
留まる事を知らない執着、止め処ない欲望。
手軽に紛らわす事など、もはや不可能な事なのだ。

激し過ぎる想いを抱えて、午後のお茶を供する為に、
あの人の部屋を訪なう。



end



※※※  ※※※  ※※※

あとがき

坊ちゃんを大切にし過ぎて、擦れ違うセバスチャン。
ストイックな悪魔の苦悩。
坊ちゃんより随分と年上ですが、セバスチャンにとって、これは初恋です。
墜として享楽を貪るのとは、まったく勝手が違うのです。
大人だって、戸惑うときは戸惑います。
そんな苦悩を乗り超えて、寄り添っていって欲しいと思います。

                               たままはなま
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たままはなま

Author:たままはなま
生息地域 日本で唯一、神無月の無い県
誕生日  5月24日(双子座)
血液型  AB型
行動の指針 後悔は少ない方がいい。やらずに後悔する位なら、今やって失敗した方がいい。「このままで、明日、命を落としても後悔しないか?」これが、最終判断の基準です。
黒執事キャラ占いで、47%がセバスチャン、タナカが33%、劉が10数%、葬儀屋が8%、アバーラインが数%、坊ちゃんが1%で出来ていると出た人。
歯医者の待ち時間や、通勤の運転中にも、次回の執筆のネタを考えている創作好き。
こんな管理人でございますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます<(_)>

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