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その淑女 邂逅 (くさもち ようとん様に捧ぐ)

2011–02–28 (Mon) 23:32
このお話は、相互リンク記念に、
くさもち管理人 ようとん様よりのリクエストにお応えして書かせて頂きました。

私に女セバをリクエストなさるとは、チャレンジャーでいらっしゃいます。

かなり苦労いたしました・・・。
今まで読んだことの無い女セバを書いてみたかったのですが、
いかがでしょうか?

それでは、いってらっしゃいませ。




その淑女、邂逅  (くさもち ようとん様に捧ぐ)

僕は、夜会が大嫌いだ。
平和ぼけした貴族たちは、寄ると触ると噂話ばかり。
それも、誰と誰がくっついたの離れたの、浮気だ不倫だと下らない事この上ない。
後は、金儲けの話、何を買った、何処へ行った、そして人の不幸の話。
まったく、この国の将来は暗そうだと思うのは僕だけか?

食べるものも、うちのシェフの料理のほうが数段口に合うし、
(米国英語で口は悪いが、腕は悪くないのだ。)
アルコールも、僕はシャンパンを少しと、ワインを嗜む程度なので、
夜会に来る理由になるほどの興味は無い。
第一、何が嫌いと言って、ダンスが何よりも嫌いなのだ。
女家庭教師が、口にはしないが、僕に教えるのに梃子摺っている。
溜息を必死に堪えているのくらい分かっていた。
こんな小柄な子供と踊りたがるような淑女もいないし、
いつだって、手持ち無沙汰で壁の花になっているしかない。
そんなこんなで、今日も来る気は無かった夜会だが、
執事のタナカが、大口の取引相手の招待だから断れないというので、
致し方なく、壁に張り付きにやって来たのだった。

同じ面子で、同じ会話を、延々と繰り返しているのであろう人々は、
なんだか自動人形のように見えてくる。
そんな淀んだ目をした人間達の向こうに、
一人だけ、生きている人間の空気を纏った人が居た。

細身で、女性としては非常に長身だった。
仕立ての良い銀色のドレスは、極シンプルなデザインのもので、
胸元や背中の開きも控えめで上品な感じに、好感が持てた。
アクセサリーは、透明度が高くカットの美しいクリスタルで統一されている。
しかし、彼女を一番引き立てるものは、その漆黒の髪かもしれなかった。
乳白色のしっとりとした肌の項を、艶々とした黒髪が、よりくっきりと見せる。
瞳の色は、澄んだ紅茶色。
淡い色の薔薇のような口紅が良く似合っていた。

沢山の人達とそつなく会話を交わす笑顔は、
過度でなく、不足でなく、完璧なものだった。

音楽に合わせて踏むステップの優雅さに、さすがの僕も見惚れた。
彼女は、次々に申し込まれて何曲も踊っているのに、
息が上がる気配も無い。

今まで一度も見かけたことのない女性だが、どこの令嬢だろうか。
まあ、僕が出向かない夜会の方が圧倒的に多いのだ。
見知らない顔も、一人や二人ではないのだから、
会った事が無いからといって、不思議な事などないのだけれど。

人いきれに疲れて、僕はバルコニーへと逃れた。
手にしていたグラスの飲み物は、もうとっくにぬるくなっていて、
口を付ける気にもならず、手摺りの上にことりと置いた。
喉が渇いた訳ではなかったが、冷たい飲み物が欲しかった。
タナカを呼ぼうと振り返った瞬間、
待っていたようなタイミングで、グラスが差し出された。
「冷たいレモネードです。どうぞ。」
過不足の無い笑顔で、彼女がそこに居た。
少し低めのアルトの声。
「これは、ありがとうございます。」

グラスを持つその人の手は、ドレスと同じ銀色の手袋をしていても、
ほっそりと形の良い長い指である事が分かる。
どこといって飾り立てていないのに、
どこも隙無く気を配られており、美しく優美だ。

僕はグラスを受け取り、よく冷えたレモネードを一口飲んだ。
「生き返りました。本当にありがとうございます。」
得意ではない笑顔で、礼を言った。
「いいえ、お気になさらないで下さい。私も一休みしたかったところですから。」
彼女も、レモネードを手にしている。
「私は、セバスティア・ミカエリスと申します。
失礼ですが、貴方は、シエル・ファントムハイブ伯爵でいらっしゃるのではございませんか?」

日本人の執事を連れた隻眼の少年。
噂を聞いたことがあれば、誰でも、それが僕であると判る。
「ええ、そうです。」
そんな気は無くても、ぶっきらぼうに聞こえると、いつもタナカに窘められる。
またやってしまったかと思ったのだが、
彼女は気にする風もなく、くすりと笑ってしなやかな手を差し出してきた。
「お会いできて光栄です。」
彼女の手を取ると、軽く握手をした。
「こちらこそ、こんな綺麗な方にお会い出来て光栄ですよ、ミス・ミカエリス。」
社交辞令は、正直あまり好きではないのだが、
今の言葉は、素直に言えたと思う。

「あら、そういう事はあまり仰らないと思っていましたけれど。」
少し驚いたというように彼女が言った。
「正直、お世辞を言うのは、あまり好きではありません。
でも、今の言葉は本心ですから。
ほら、ホールの方で貴女をお待ちの方々がこちらを窺っていらっしゃいますよ。」
噂に名高い、気難し屋の少年伯爵を気にしてか、
数人が小突き会っているものの、彼女を攫いには来られないらしい。
「もう少し匿って下さい。あんな退屈な方たちとのダンスなんて、楽しくありませんから。」
人差し指を唇に当てる仕草をして小首を傾げてみせるが、
その笑顔に反して、言葉はかなり本気のようだ。
目が、なんと言うか・・、笑っていない。
これは、筋金入りの喰えない性質の人らしい。

「貴女は、なかなか面白い方のようですね、ミス・ミカエリス。」
「セバスティアとお呼びください、ファントムハイブ伯爵。」
彼女が、ニッコリと笑った。
「それなら、僕もシエルで結構です。」
僕も、ニヤリと笑った。

「私のことを、ずっと見ていらしたでしょう?」
僕と並んで、バルコニーの手摺りに凭れ、
様子を窺う目で僕を見下ろしたセバスティアが言う。
「それに気付いていたという事は、貴女も僕の事を観察していらっしゃったのですね。」
真っ直ぐに、セバスティアの目を見返した。
くすくすと楽しそうに笑う。
「この会場で、つまらなそうに壁に凭れている貴方だけが、
本物の生きている人間の色をしていらしたものですから、目が離せませんでした。」
僕らは、似たもの同士だったという訳だ。
「僕も、貴女だけが生きている人間に見えて、目が離せなかった。」
二人で顔を見合わせて、くすくすと笑い合った。

「今度夜会でお会いした時には、必ず最初に私にダンスを申し込んで下さいね。」
ダンス・・・・・。僕は苦笑する。
「防虫剤代わりにならなれそうですが、
ダンスは、お恥ずかしい話ですが苦手なのですよ。」
「よろしかったら、私が教えて差し上げます。
レッスン中ですと言って、面白くもない方達からの誘いを断れるでしょう?」
悪戯好きな少女のような事を言う顔は、心底愉快そうだ。
「僕も、壁のシミのままにならなくても済みそうですね。」
僕たちは、そんな他愛も無い話をして過ごした。

いつもなら早々に引き上げるのだが、
セバスティアとの会話が面白くて、お開きになる時間までいた。
「今夜は、とても楽しく過ごせました。ありがとう。
また、お会いしましょう、セバスティア。」
「お約束は、必ず守って下さいね、シエル。」
美しい笑顔で、セバスティアは迎えの馬車に乗り込んだ。

僕とタナカを乗せた馬車が動き出すと、タナカが言った。
「坊ちゃん、今夜の夜会はいかがでした?」
セバスティアとの会話を思い出し、口元が少しほころぶ。
「ああ、悪くなかった。」
「それは、よろしゅうございました。」
タナカが、満足げに頷いていた。

今夜が楽しかったからといって、そう簡単に次の夜会に出る気にはならないが、
次に夜会に出席する時にも、セバスティアに会えればいいと思ったのだった。



その後、どこからどう伝手をたどったものか、
タナカが新しいダンスの家庭教師だと連れてきたのは、
誰あろう、セバスティアだった。
タナカは、ある意味、最強の執事かもしれないと僕は思った。



end



※※※  ※※※  ※※※

あとがき

私に女セバをリクエストなさる方がいらっしゃるとは、想定外でした・・・。
どうしていいかわからなくて、女セバが悪魔である設定が飛んでしまいまいた。゜゜;
でも、深い苦悩を抱えるシエルに、たまには、こんなお話があってもいいと思うのです。

                                 たままはなま
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たままはなま

Author:たままはなま
生息地域 日本で唯一、神無月の無い県
誕生日  5月24日(双子座)
血液型  AB型
行動の指針 後悔は少ない方がいい。やらずに後悔する位なら、今やって失敗した方がいい。「このままで、明日、命を落としても後悔しないか?」これが、最終判断の基準です。
黒執事キャラ占いで、47%がセバスチャン、タナカが33%、劉が10数%、葬儀屋が8%、アバーラインが数%、坊ちゃんが1%で出来ていると出た人。
歯医者の待ち時間や、通勤の運転中にも、次回の執筆のネタを考えている創作好き。
こんな管理人でございますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます<(_)>

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