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Fall 4

2013–07–16 (Tue) 06:19
お待たせいたしました。
“Fall 3”の続きでございます。
今回は、坊ちゃんとセバスチャンのターンとなっております。

やっとセバシエっぽくなってきた感じかと思います。
楽しんで頂けましたら嬉しいです。

それでは、行ってらっしゃいませ。



2じん子さん、軍服主従清書

Fall 4



自分を“伯爵”と呼ぶように言った少年は、強い光を宿した目で、値踏みするように私を観察していた。拷問としては最も効果の高い睡眠の阻害にも、何らの変化も見せずにいた私に、かなりの興味を抱いているようだ。彼に向かい合う壁に鎖で繋がれている状態で、私もまた、彼を観察した。白い柔らかそうな頬は少年らしい円い曲線を描き、きつい角度で上がる意思の強そうな細くてくっきりとした眉の下には、少し眦の下がった大きな瞳。その周囲は濃く長い睫に縁どられている。ふっくらとした唇は薄いピンクの艶を帯びていた。中性的と言うよりは、少女の様な容貌をしているのに、彼の纏う空気は、大人びてぴんと張りつめている中に、立場からくるものか、どこか余裕や気高さを感じさせた。本当に伯爵の爵位を持っている貴族なのかも知れない。
しかし、それにしては年齢がかなり低い気がする。体つきから見て、まだ10代に入ったばかりだろう。どうしてこんな子供が対暗殺部隊を率いているのか。しかも、彼らはとても一筋縄ではいかないメンバーばかりだ。
確かに賢そうな顔立ちをしているが、何か特別な教育でも受けているというのか。ただの人員不足などでない事は、これまでに何度も暗殺を阻止し、今、こうして私を罠に嵌めて捉えた手腕から知れるのだが。
この子供を知りたい。何を考え、どう生きようとしているのか。私は、自分が随分と久しぶりに人間に対して関心を向けているのを感じた。

「“デビル”か。なかなか面白いネーミングだな。」
片頬だけでにやりと嗤う子供。恐れなど微塵もなく、私を見据える姿にぞくぞくとする。
「お褒めに預かり光栄です。」
そう返してやると、くつくつと声をたてた。
「うちの“シェフ”達には名乗りすらしなかったらしいから、捕まったショックで声を失ったかと思ったが、ちゃんと喋れるようだな。それとも、暫く誰とも話していなかったから、話し相手が欲しくなったのか?」
私はにっこりと笑顔を見せて答えた。
「いいえ、私は話す相手を選ぶだけですよ。」
「ほう。誰とでも話すほど安くはないと言いたいわけだ。随分とお高く留まっている。」
呆れた声で子供が言う。
「そうですね。私は“高くつく”存在だと申し上げておきましょう。」
これまで一切口を開かなかった私が子供の話に答えているのを、“ファントム”のメンバー達は驚きの様子を見せもせずに黙って見ている。特務機関の者として動揺を見せない事は当たり前ではあるが、眉ひとつ動かしもしない彼らは、非常によく教育されているといっていいようだ。
「“高くつく存在”とはどういう意味だ?」
子供は背もたれにゆったりと身を凭れさせ、睥睨するように問い質す。実にいい。
「“伯爵”、申し訳ありませんが、これ以上は他の人間のいる前ではお話できかねます。」
“スチュアート”が一歩前に出る。
「危険です、“伯爵”。この者と二人きりになるのはお勧め出来ません。」
「時には危険に身を晒さねば得られないものもある。僕はこの男から得られる情報はそれだけの価値があると判断する。皆、部屋を出ていろ。」
毅然とした子供の答えに、些かの渋面を見せるが、上官の命令は絶対だ。
「かしこまりました。ですが、何かありましてはいけませんので、これをお持ち下さい。」
そう言って懐から取り出したのはベルギーのFN社製 FN ポケット・モデル M1906、通称ブローニング・ベビー。全長104mm、重量275g、25口径。使用銃弾は25ACP弾。弾頭重量と火薬量が少ないため威力は低いものの、その分反動も小さいので小柄な女性でも扱いやすく、“伯爵”の様に小柄な体であっても射出時の衝撃に耐えられる設計の、護身用によく用いられる拳銃だった。総弾数は6発しかないが、戦闘重視ではないのだから、充分といえる。1931年から現在まで作られ続けるのは、基本設計の確かさによる安定した人気によるものだろう。ただ、“スチュアート”が“伯爵”の前のテーブルに置いたものは、グリップが通常のものと違い、握り込み易いように曲線にカスタマイズされ、ブローニングの刻印があるべき所に、何かのエンブレムが彫り出されているものだった。このエンブレムが“伯爵”のものであるのか、“ファントム”のものであるのかは分からないが、この組織がかなり特別に扱われているのだろう事は想像できた。
「分かった。行け。」
子供がそれだけ言って銃を手に取った。
メンバー達は部屋の扉の向こうに消えた。まあ、扉のすぐ前に立ち、何事かあれば直ぐに飛び込んで来る用意をしているのであろうというのは自明の理である。
「さて、さっきの続きを話してもらおう。」
まだ銃を構える気はないらしい。ただ何時でも撃てるように握っているだけで、銃口はこちらには向けられないでいる。
「そうですね。お気付きかも知れませんが、私は普通の人間ではありません。」
「だろうな。普通の人間が全く睡眠も取らずに10日もまともでいられる筈がない。で、お前は何者だ?」
私は彼を少し驚かせてやりたくなった。
「まず、こんな事が出来ますね。」
そう言うと、私は繋がれていた鎖を軽く引き千切って見せた。
「ふうん。」
驚いた風もなくこちらを見ている。想定内だったか。
「そして、こんな事も・・・。」
手枷を指先で撫でただけで、それは音もなく外れ、カーペットの上に落ちた。子供は眉間に皺を寄せ、視線を強くする。
「マジックというわけでもないな。」
「そうですね。鍵は“シェフ”しか持っていませんし、種も仕掛けもありません。」
私は口角を上げ、ゆっくりと“伯爵”の元へと近づいていくが、彼はアームレストに腕を乗せ、足を組み替えただけだった。この子供は、非常に面白い。今まで、私がこの程度の事をしただけで、大抵の者が気味悪がったというのに。彼は私を何者だと考えているのか興味が湧いた。
「私をどういう者だとお思いですか?」
「人外なのは確かだとするとして、コードネームのままなら、お前は“悪魔”という事になるな。」
私は喉の奥で笑い声を殺す。この物怖じしない子供は、正しく、“死神”達の襲撃を阻止し、私の裏をかいて、ここへ連行させた人物その人だ。彼なら、絶えて久しい感覚を私に与えてくれるかも知れないと思った。

“死神”の仕事は、私にとっては暇つぶしであり、私が生命維持をするのに必要な糧である人間の魂を得る為の手段でしかない。(暫くの間は食べなくとも問題はないが、空腹には苛まれる。)悠久の時を生きる種族である私は強大な“闇の力”を持ち、人間はそんな私達を“悪魔”と呼び忌み嫌う。しかし、人は自分の望みを叶えるのに手段を選ばなくなった折りには、魔法陣と呪文、そして生贄となる者を用意して、我々を招喚するのだった。神に祈りを捧げるよりはるかに確実に欲望を叶えてやるのだから、呼ばずにいられなくなる輩が引きも切らないのである。
普通は契約を交わして、希望通りの結末を与えたら契約者の魂を喰らうのだったが、私は同種族の中でもあまりに長く生きて、そんな事に飽きてしまったのだ。だから、人の世界に身を置いて、契約をせずに、“仕事”の代償として依頼者の代わりの魂を差し出させているのである。
次に契約を交わすとしたなら、それは、これまで食べたどの魂より以上に芳醇な魂の持ち主と決めて。今、眼前にいる子供は、契約の相手として申し分ないと思われ、私は彼に申し出る事にしたのであった。
「私は“死神”に忠誠を誓ってはおりません。もしも貴方にその気がおありでしたら、私は貴方に忠誠を誓っても構わないと思っておりますが、如何なさいますか?」
誘う言葉に、彼は多分・・・。
「お前が僕に忠誠を誓う?つまり、僕にお前と契約しろという事か。それで僕にどんなメリットがあるというんだ?」
こう答えると思った通りの答えが返って来た。
「まず、私が知り得ている “死神”の全ての情報をお伝え致します。“死神”が所属している組織自体の詳細な情報もお付けしましょう。そして、貴方の望みが叶うまで、私は貴方の盾となり、剣となって闘いましょう。」
「僕には何を要求する気だ?」
「貴方の全てを、私に。」
青く澄みきった双眸が、私の何もかもを見抜こうとするように向けられる。
「全てという事は、命も取るという意味か?」
「最終的にはそうなりますかね。契約終了の際には魂を頂くのですから。ただ、貴方の望みを叶えまでは、この身に替えてお守り致しますよ。」
「魂の他にも要求するものがあるのだろう。何が欲しい?」
“全て”の意味を正しく理解しているようだ。
「貴方自身を。」
ソファーの前に立った私は、子供の頬を指先で撫で上げる。
「空腹を耐えるのですから、そのくらいのご褒美を頂かなくてはね。」
子供は挑戦的な眼差しで私を射る。この高慢な表情が崩れていく様は、どんなに私を魅了するだろう。考えただけでも背筋にぞくりと電流が走る。傍に立つだけで、子供からは美味な香りが漂って、私を逸らせるのだった。



To be continued

※※※  ※※※  ※※※

“Fall"シリーズは、次回の5で完結予定でございます。
ただ今、校正をしております。

来週初頭にはUP出来るつもりでおりますので、
今少しお時間を下さいませ。

皆様の次回のお越しを、心よりお待ち申し上げております<(_ _)>

                 たままはなま
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たままはなま

Author:たままはなま
生息地域 日本で唯一、神無月の無い県
誕生日  5月24日(双子座)
血液型  AB型
行動の指針 後悔は少ない方がいい。やらずに後悔する位なら、今やって失敗した方がいい。「このままで、明日、命を落としても後悔しないか?」これが、最終判断の基準です。
黒執事キャラ占いで、47%がセバスチャン、タナカが33%、劉が10数%、葬儀屋が8%、アバーラインが数%、坊ちゃんが1%で出来ていると出た人。
歯医者の待ち時間や、通勤の運転中にも、次回の執筆のネタを考えている創作好き。
こんな管理人でございますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます<(_)>

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