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そんなこともあるかもしれない 4

2013–01–22 (Tue) 19:26
「そんな事もあるかもしれない」シリーズ完結編です。
こんな事、無いだろうとは思いつつ、あってもいいですよね?
という気分で書き始めたシリーズでした。
やっと完結編を書く事が出来て嬉しく思います。

皆様のお気に入って頂ければ幸いです。

それでは、行ってらっしゃいませ。



そんなこともあるかもしれない 4



夜半過ぎから、坊っちゃんの様子が変わってきていた。
悪魔になってからも、夜の時間に眠る習慣はそのままで、
朝の時間が訪れるまで眠り続けるのが常なのに、
不定期に眉根を寄せて辛そうな表情を見せる。
暫く様子を見ていたのだが、段々と苦しげにする間隔が短くなってきていた。
「うっ・・・・く・・・。」
坊っちゃんは、とうとう声を上げて意識を浮上させた。
「坊っちゃん、大丈夫ですか?」
小さく声を掛ける。
薄く目を開けて私を認め、眉間に深く皺を寄せた。
少しすると力が抜けて、ほっとため息を吐く。
「痛い。というか、苦しくなるんだ。」
とうとう、この日が来たようだ。
「坊っちゃん、それは陣痛ですよ。」
胎児が充分に育ち、胎外へ出る時を迎えたのだった。
もうどのくらい生きているのか忘れてしまいそうな私でさえ、
“人”の出産を見た事はあるが、悪魔の出産に立ち会うのは初めてだ。
悪魔は“人”の様に群れて生きるものではないので、
文献や風聞としては知っていても、実際に遭遇した事はない。
しかも、自分の子供を持つ事など、これまで考えもしなかったのだ。
胎児が生まれ出る為には、胎児が外へ出ようとする力と、
母体が胎児を押し出そうとする力の均衡が必要なのだという。
その胎児を押し出そうとする母体の反応が陣痛だ。
「このくらいでは、まだ生まれないな。」
坊っちゃんも“人”の出産に関する知識は、屋敷に揃えた蔵書から得ている。
「そうですね。もっと痛みの間隔が短くなってきませんと。
まだ会話が出来る間は生まれないようですよ。」
私は、そう言いながら出産の為の用意を始めた。



悪魔は性別を問わず子供を持つとヤツは言った。
時が来れば、その為の機能を持つ体に変容するのだと。
つまり、僕の体は、今まさに出産するための体に変容しているのだろう。
胎児を胎外へ押し出す為の筋肉の収縮が、その証拠だ。
何処がと言えない激しい鈍痛が腰の辺りを襲う。
呼吸法で痛みを緩和する方法を取っても、苦しいものは苦しい。
母が僕を生んだ時代には、こんな方法はまだ知られていなかった筈だ。
多分、もっと苦しんだのではないかと思う。
身体の弱かった母には、どれ程の負担だったろうか。
支度をすっかり済ませたヤツが、僕の体を起こし、
ベッドのヘッドボードと背中の間に大きなクッションを置いた。
「坊っちゃん、お辛いでしょうけれど、
体を起こしていた方が、胎児が降りてくるのが早くなりますので、
どうか我慢なさって下さいね。」
優しげな声でそう言った。
しかし、この苦痛はヤツが子供を持とうなどと言った、というか、
まあ、そういう風にした所為だ。
文句の一つも言ってやりたい気分になる。
「この貸しは高く付くと思え。」
絞り出すような声で、やっとそれだけ言う。
「如何様にもお受け致しますよ。マイ・ロード。」
ふわりと微笑むその顔にも腹が立つ。
何だというんだ、その甘い声は。
僕は、もっと何か言ってやりたかったが、
それ以上何かを考えるだけの思考を保っていられなかった。
既に、次の痛みが襲って来ていたのだ。

激痛の波を何度もやり過ごし、時間の感覚も失って、
もうどのくらい苦しんでいるのかも分からなくなっていた僕に、
これまで以上の、声も出せない激烈な痛みがやって来た。
体中の力が腹部に掛かっていく。
これが“いきむ”という事かと霞む意識の中で思ったような気がする。
「坊っちゃん、産まれますよ!」
ヤツの声がやけにはっきりと聞こえたと思う。




産みだそうとする力と、産まれ出ようとする力の絶妙な均衡によって、
胎児は母体からするりと押し出され、初めての呼吸をした。
「ぉぎゃあ!」
小さな口をいっぱいに開けて、大きな声を上げ続ける。
これが、私と坊っちゃんの子供。
「やっと会えましたね。」
私の口から、そんな言葉が零れた。
まだ羊水の湿りを残す体を抱き上げて、
ぐったりと疲労しきった坊っちゃんの胸に連れて行く。
坊っちゃんは、赤子の顔を覗き込んでふっと笑った。
「お前に、似ている。」

胎児を産みだした悪魔の体は、数日も待つことなく、
出産の為の機能を持つ体から普通の機能の体に戻ると文献にあった。
私の坊っちゃんの体が戻ってくるのが待ち遠しい。
早く、坊っちゃんの体が元に戻っているのを、隅々まで確かめたい。
まだ名前も付けていない赤子をベビーベッドに寝かしつけながら、
そんな事を考えてしまっている私は、
もう随分と昔に、よくあの侯爵夫人が仰っていらしたように、
“ふしだらな顔”をしているのかも知れなかった。



END



※※※  ※※※  ※※※

長らくの療養で、なかなかお話を書けず、
シリーズのお話を完結させていけずにおりまして、
私としても非常に遺憾な思いでおります。

体調の良い時を見計らって、
他のシリーズも書いていけたらと思います。

ジワジワの亀速度での更新ですが、
どうか見捨てずにいてやって下さいますよう、
お願い申し上げます。

         たままはなま

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たままはなま

Author:たままはなま
生息地域 日本で唯一、神無月の無い県
誕生日  5月24日(双子座)
血液型  AB型
行動の指針 後悔は少ない方がいい。やらずに後悔する位なら、今やって失敗した方がいい。「このままで、明日、命を落としても後悔しないか?」これが、最終判断の基準です。
黒執事キャラ占いで、47%がセバスチャン、タナカが33%、劉が10数%、葬儀屋が8%、アバーラインが数%、坊ちゃんが1%で出来ていると出た人。
歯医者の待ち時間や、通勤の運転中にも、次回の執筆のネタを考えている創作好き。
こんな管理人でございますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます<(_)>

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